2019.11.08
インド ウッタル・プラデシュ州アヨーディヤのバブリ・マスジッド跡地所有権に関する裁判(注意喚起)
インド最高裁判所によるウッタル・プラデシュ州アヨーディヤにおけるバブリ・マスジッド跡地の所有権に関する判決が11月17日(日)までに下される見込みです。同判決の内容によってはインド各地で混乱や衝突が発生する可能性がありますので,不測の事態に対する注意が必要です。
1 報道によると,インド最高裁判所は,11月17日(日)までに,長い間インドの宗教間対立の象徴となってきたウッタル・プラデシュ州アヨーディヤにおけるバブリ・マスジッド跡地の所有権に関する判決を下す見込みです。インド政府はウッタル・プラデシュ州に治安部隊を派遣し,その他各州にも治安維持の準備を進めるよう指示を出している他,ヒンドゥー,ムスリムの有力団体等が治安を乱さぬよう判決を平和的に受け入れることを表明していますが,判決の前後にウッタル・プラデシュ州に限らず,インド各地で混乱や衝突が発生することも懸念されます。
(参考:バブリ・マスジッド跡地所有権に関する裁判の経緯)
バブリ・マスジッドは,16世紀に,ヒンドゥー教徒の信仰するラーマ神の生誕地とされる地に所在したラーマ寺院を破壊して建設されたとされる。以降,ヒンドゥー・ムスリム間で同地を巡り争いが繰り返された。1949年にヒンドゥー活動家によりマスジッド内にラーマ神像が設置されたことを契機として,争いは法廷に持ち込まれた。これを受け,政府は係争地を立入り禁止とした。
1980年代にヒンドゥー教徒による同地のラーマ寺院建設の気運が高まり,1992年,ヒンドゥー教団体やBJP支持者等,約20万人が参集しバブリ・マスジッドを破壊。その後,同地の所有権を巡る争いがアラハバード高等裁判所に持ち込まれた。ヒンドゥー・ムスリム間の対立と緊張は高まり,各地で事件や暴動が続いた。2002年には,アヨーディヤで開催されたラーマ寺院建設を求める集会に参加したヒンドゥー教徒を乗せた列車が,グジャラート(GJ)州内でムスリム暴徒の襲撃・放火を受け,58人が殺害されたことを発端に,GJ州内で大規模な暴動が発生し2000人以上(その多くがムスリム)が死亡した。
アラハバード高等裁判所は,長い時間をかけた審理の後,2010年,所有権を主張する2つのヒンドゥー団体及び1つのムスリム団体に同地(2.77エーカー)を3等分する判決を下したが,ヒンドゥー・ムスリム両団体が,判決を不服として最高裁に控訴した。
2 つきましては,在留邦人の皆様,インド渡航中の皆様におかれましては,騒乱やテロ事件等の不測の事態に巻き込まれることのないよう最新の治安情報の入手に努め,特に,騒乱やテロの標的となりうる宗教施設,公共交通機関,空港,駅,市場など多数の人が集まる場所には用事のない限り近づかない,公共交通機関の利用や繁華街等への外出が必要な場合には,滞在を必要最小限とし,周囲の状況,特に不審車両や不審物の有無等周囲の状況に一層の注意を払うなど安全対策に十分心掛けてください。また,騒乱やテロ事件が発生した場合の対応策を再点検し,状況に応じて適切な安全対策が講じられるよう心掛けてください。
3 テロ等対策に関しては,外務省海外安全ホームページに掲載されている以下の情報も併せてご参照ください。
(1)パンフレット「海外へ進出する日本人・企業のための爆弾テロ対策Q&A」
https://www.anzen.mofa.go.jp/pamph/pamph_03.html
(2)パンフレット「海外旅行のテロ・誘拐対策」
https://www.anzen.mofa.go.jp/pamph/pamph_10.html
また,インドの危険情報等についても外務省海外安全ホームページに掲載されていますので,ご自身及びご家族の安全対策の参考にしてください。
(問い合わせ窓口)
○在インド日本国大使館
電話: (91) -11-4610-4610
メール:jpemb-cons@nd.mofa.go.jp