2021.12.21
マリ 危険情報【一部地域の危険レベル引き上げ】
危険レベル・ポイント
【危険度】
●トンブクトゥ州、キダル州、ガオ州、モプチ州、セグー州、クリコロ州北部、カイ州北部、メナカ州及びタウデニ州
レベル4:退避してください。渡航は止めてください。(退避勧告)(継続)
●カイ州北西部(カイ及びカイ周辺地域)、シカソ州東部(ブルキナファソとの国境地帯)及び同州南部(コートジボワールとの国境地帯)
レベル4:退避してください。渡航は止めてください。(退避勧告)(引上げ)
●首都バマコを除く上記以外の地域
レベル3:渡航は止めてください。(渡航中止勧告)(継続)
●首都バマコ
レベル2:不要不急の渡航は止めてください。(継続)
【ポイント】
●2020年12月18日、マリ暫定政権は、治安危機及び新型コロナウイルス感染拡大への対応として、マリ全土に非常事態宣言を発令しました。これにより、国防・治安・司法・行政当局の権限が強化されています。
●2020年8月及び2021年5月、マリ国軍一部兵員による2度の武力政変が発生するなど、政治社会情勢が不安定です。
●カイ州北西部、シカソ州東部及び同州南部において、イスラム過激派組織による事案が多発していることから危険度をレベル4に引き上げます。これらの地域を含め、危険レベル4の退避勧告を発出している地域へは、どのような目的であれ渡航は止めてください。また、既に滞在している方は直ちに退避してください。
●マリ全土において、テロ・誘拐事件等の不測の事態に巻き込まれる高い脅威があります。やむを得ずマリへ渡航する場合には、厳に首都バマコに留まるようにしてください。
詳細
1 概況
(1)2016年以降、テロはマリの北・中部に浸透し、さらには首都バマコを含む南部にも脅威が及び始めたことにより、マリ全土に非常事態宣言が発令、維持されてきました。2020年8月の政変後に発足した暫定政権は、同宣言を延長しなかったため、同年10月31日24時に同宣言は失効しましたが、同年12月18日、同暫定政権は、治安危機及び新型コロナウイルス感染拡大への対応として、マリ全土に再び非常事態宣言を発令しました。これにより、国防・治安・司法・行政当局の権限が強化されています。
(2)2020年8月及び2021年5月、マリ国軍の一部兵員による2度の武力政変が発生するなど、政治社会情勢が不安定です。
(3)北部(トンブクトゥ州、ガオ州、キダル州、メナカ州及びタウデニ州)、中部(モプチ州及びセグー州)及び南部(クリコロ州北部及びカイ州北部)の危険度レベル4を継続するとともに、これに加え、カイ州北西部(カイ周辺地域)、シカソ州東部(ブルキナファソとの国境地帯)及び同州南部(コートジボワールとの国境地帯)においても、イスラム過激派組織によるテロ・誘拐事件が多発しており、民間人にも多くの被害が発生していますので、危険度をレベル4に引き上げます。また、モプチ州では、部族間抗争が激化し死傷者が増加しています。
(4)マリ国内各地において、マリ暫定政権に対する抗議や外国部隊(国連PKO(MINUSMA)、フランス軍、G5サヘル合同部隊等)の撤退要求等を理由に多くのストやデモ・集会が行われ、参加者と治安当局が衝突し、負傷者や逮捕者が出ています。また、武装強盗等の凶悪事件も発生しています。
(5)2015年11月に発生したバマコ中心部の「ホテル・ラディソン・ブルー」、また、2017年6月に発生したバマコ東郊のリゾート施設「キャンプメント・カンガバ・コンプレックス」へのイスラム過激派組織によるテロ事件以降、これらと同等に国際的に大きく報じられる規模のテロは発生していません。しかし、2020年10月に、イスラム過激派組織により誘拐されていた最大野党党首及び欧米人人質の解放と引き換えに、200人程の過激派構成員が北部で釈放されたと報じられるなど、マリにおけるテロの危険性は依然として非常に高いものと考えられます。
(6)上記のとおり、マリ全土でテロ・誘拐事件等の不測の事態に巻き込まれる高い脅威があります。やむを得ずマリへ渡航する場合には、厳にバマコに留まるようにしてください。
2 地域情勢
(1)北部地域(トンブクトゥ州、キダル州、ガオ州、メナカ州及びタウデニ州)、中部地域(モプチ州及びセグー州)並びに南部地域のうちクリコロ州北部及びカイ州北部
レベル4:退避してください。渡航は止めてください。(退避勧告)(継続)
ア 北部地域(トンブクトゥ州、キダル州、ガオ州、メナカ州及びタウデニ州)
北部地域では、マリ暫定政府の統治・治安維持が十分に及んでいません。現在もフランス軍がイスラム過激派組織の掃討作戦を行っており、また、MINUSMAも平和維持活動を継続しています。
2017年3月、イスラム過激派組織「アンサール・ディーン」(AD)、「イスラム・マグレブ諸国のアル・カーイダ」(AQIM)、「マシナ解放戦線」(FLM)の連合体である「イスラムとムスリムの支援団」(JNIM)が結成され、北部及び中部で、フランス軍、マリ国軍、MINUSMA及びG5サヘル合同部隊に対する襲撃や民間人へのテロ・誘拐を活発に行っています。
これらイスラム過激派組織は、ロケット弾及び簡易爆発装置を使用して、フランス軍、マリ国軍、MINUSMA及びG5サヘル合同部隊を標的とした攻撃を繰り返しており、2021年3月には、マリ北部ガオ州のアンソンゴ付近にて、少なくとも30人のマリ国軍兵士がイスラム過激派組織による待ち伏せ攻撃で死亡しています。
また、イスラム過激派とみられる武装集団による国際NGOやジャーナリスト等に対する強盗・誘拐事件が続発しており、2021年4月にも、マリ北部ガオで、フランス人ジャーナリストの誘拐事案が発生しました。
イ 中部地域(モプチ州及びセグー州)
中部地域では、2015年頃から、土地をめぐるバンバラ族(農耕民)とプル(フラニ)族(遊牧民)の間の伝統的な確執が尖鋭化しています。最近ではドゴン族(農耕・狩猟民)とプル族の間の対立も激化しており、2020年7月には、モプチ州バンカス圏において、身元不明の武装集団により、4箇所のドゴン族の村落が襲撃を受け33人が死亡し、複数人が負傷するなど、モプチ州及びセグー州において数十人規模の犠牲者が発生する武装集団による襲撃事件は常態化しています。
また、JNIM及び「大サハラのイスラム国」(ISGS)をはじめとするイスラム過激派組織の活動が活発化しており、主要都市を結ぶ幹線道路においては、地雷や簡易手製爆弾(IED)を使用した攻撃も多発しています。
さらに、イスラム過激派とみられる武装集団による国際NGO等に対する強盗・誘拐事件が続発しています。
ウ 南部地域のうちクリコロ州北部及びカイ州北部
モーリタニア南部国境に隣接するこれらの地域においても、イスラム過激派組織が活動し、テロ・誘拐等の凶悪事件が多発しています。2021年7月、クリコロ州のマリとモーリタニアの国境に近いナーラ圏において、建設会社勤務の中国人3人及びモーリタニア人2人が誘拐されました。つきましては、どのような目的であれ、これらの地域への渡航は止めてください。既に滞在している場合は、直ちに安全な地域へ退避してください。
これら地域においては、治安上の問題等から、大使館の対応に限界があることにも留意してください。
(2)カイ州北西部(カイ及びカイ周辺地域)、シカソ州東部(ブルキナファソとの国境地帯)及び同州南部(コートジボワールとの国境地帯)
レベル4:退避してください。渡航は止めてください。(退避勧告)(引上げ)
ブルキナファソ、コートジボワール及びモーリタニア南部国境に隣接するこれらの地域においても、イスラム過激派組織が活動し、テロ・誘拐等の凶悪事件が多発しています。
ア カイ州カイ及びその周辺地域において、奴隷問題等に関する暴力事件が多発しており、多くの死傷者が発生しております。
イ 2021年4月、マリ南部シカソ州シカソ圏ザンティギラ(Zantiguila)において、テロリストと疑われる5人が逮捕されました。
ウ 2021年7月には、シカソ州クティアラ(Koutiala)圏にて、JNIMや「マシナ解放戦線(FLM)」系とみられるイスラム過激派組織が相次いで目撃されています。
つきましては、どのような目的であれ、これらの地域への渡航は止めてください。既に滞在している場合は、直ちに安全な地域へ退避してください。
これら地域においては、治安上の問題等から、大使館の対応に限界があることにも留意してください。
(3)首都バマコを除く上記(1)以外の地域
レベル3:渡航は止めてください。(渡航中止勧告)(継続)
ア バマコの周辺地域を含め、南部各地もイスラム過激派組織によるテロ・誘拐の脅威は常に存在します。
イ 2021年5月、クリコロ州ヌガ(Nouga)の金採掘現場付近のディウラフンド(Dioulafoundo)村とトンボラ(Tombolla)村の村民同士が衝突し、8人が死亡、約30人が負傷しました。
ウ 2021年9月、首都バマコ北のクリコロ州コロカニ圏(Kololani)セバブグ(Sebabougou)において、マリ国軍によってエスコートされていた鉱山会社の車列がテロ攻撃を受け、憲兵隊員5人が死亡、4人が負傷し、トレーラートラック11台が破壊・焼却されました。同事件について、JNIMが犯行声明を発しました。
エ セネガルとの国境付近やギニアとの国境付近では、金採掘の利権や地元住民の労働条件をめぐり、治安当局を巻き込んだ住民抗争やデモが発生し、死傷者が出る事案が続発しています。
つきましては、これらの地域への渡航・滞在は、どのような目的であれ止めてください。
(4)首都バマコ
レベル2:不要不急の渡航は止めてください。(継続)
ア 2015年11月に発生したバマコ中心部の「ホテル・ラディソン・ブルー」、また2017年6月に発生したバマコ東郊のリゾート施設「キャンプメント・カンガバ・コンプレックス」へのイスラム過激派組織によるテロ事件以降、これらと同等に国際的に大きく報じられる規模のテロは発生していません。しかし、2020年10月に、イスラム過激派組織により誘拐されていた最大野党党首及び欧米人人質の解放と引き換えに、200人程のテロリストが北部で釈放されたと報じられるなど、マリにおけるテロの危険性は依然として非常に高いものと考えられます。また、テロ未遂事件やテロリストにつながりがあると見られる人物がバマコで逮捕されるなど、引き続き予断を許さない状況です。
イ 2019年7月、第5区において、深夜に約200人の若者がバー14軒及びホテル2軒に押し入って破壊や略奪を組織的に行い、6人が負傷しました。マリ治安部隊は、破壊や略奪の容疑で39人を逮捕しました。
ウ 2020年7月10日の反ケイタ前大統領を掲げる大規模抗議デモ集会以降、市内の複数箇所において騒擾事案が連日発生し、暴徒化した一部のデモ参加者による公的機関の施設や商店への破壊・略奪行為が確認され、各種報道によると、一連の市街騒擾で死者11人、負傷者154人が発生しました。
エ 2021年2月、MINUSMA本部付近において、バマコ国際空港へ向かうタクシーの車中で、女性がタクシーの運転手に刺され所持品を奪われました。
オ 2021年4月、トゥアレグ人武装勢力「CMA」(注:北部の分離独立武装勢力)の代表が自宅前で何者かによって銃殺されました。
カ マリ国民の生活環境や治安情勢が改善しないことに対する不満から、マリ暫定政権や治安当局の対応に対する抗議や外国部隊(MINUSMA、フランス軍、G5サヘル合同部隊等)の撤退要求等を理由に、多くのストやデモ・集会が頻繁に行われており、デモ等の参加者と治安当局の衝突により負傷者や逮捕者が出ています。
つきましては、バマコへの不要不急の渡航は止めてください。やむを得ず渡航する場合には、必ず「たびレジ」の登録か、在マリ日本国大使館への在留届の提出を速やかに行ってください。加えて、報道等により現地の最新情報の入手に努め、夜間の外出は避け、民間警備会社による警備を依頼するなど、所属企業や団体等を通じて必要かつ十分な安全対策を講じてください。
3 滞在に当たっての注意
マリへの渡航・滞在における一般的な注意事項については、外務省海外安全ホームページ内の「安全対策基礎データ」(https://www.anzen.mofa.go.jp/info/pcsafetymeasure_121.html )も併せて参照してください。
また、出入国の際は、地方空港ではなくバマコのバマコ国際空港(Aéroport International Bamako Senou)のみを利用してください。マリに滞在する、または滞在中の場合は、在マリ日本国大使館、現地関係機関、報道等より最新の情報を入手し、次の事項に十分留意して行動し、危険を避けるようにしてください。
(1)渡航の際には万一に備え、家族や友人、職場等に日程や渡航先での連絡先を伝えておくようにしてください。
マリに3か月以上滞在する場合は、在マリ日本国大使館が緊急時の連絡先を確認できるよう、必ず在留届を提出してください。(https://www.ezairyu.mofa.go.jp/RRnet )
3か月未満の旅行や出張等の際には、渡航先の最新安全情報や、緊急時に在マリ日本国大使館からの連絡を受け取ることができるよう、外務省海外安全情報配信サービス「たびレジ」に登録してください。(https://www.ezairyu.mofa.go.jp/tabireg/ )
(2)滞在にあたっての基本的な注意事項
ア マリへ渡航する場合は、厳にバマコのみに滞在することとする。
イ バマコに滞在する場合でも、常時警備員が配置され、手荷物検査や車両チェックなどのテロ対策が行われている、セキュリティレベルの高いホテルをあらかじめ手配する。
ウ 徒歩での移動は絶対に避け、あらかじめ手配した、信頼できる運転手による車両で移動する。
エ デモ隊に遭遇したら、速やかにその場を離れる。
オ 深夜・早朝の移動を伴う時間帯に発着する航空機の利用は避ける。
カ マリ社会では、強盗等の犯罪者、さらには職権を濫用する警察官に対し、群集がリンチを行うことがあるため、このような現場に遭遇した場合は速やかにその場を離れる。
キ 外出の際は身の回りの安全に十分注意し、派手な服装や目立つ荷物の携行は避ける。
ク 警察官を含めほとんどのマリ人は現地語(バンバラ語)を話す。中にはフランス語を話す人もいるが、英語はほぼ通じない。
(3)不測の事態に備え、食料、飲料水、必要な医薬品をあらかじめ備蓄しておくとともに、緊急時の国外退避に備え、パスポートやビザの有効期限を確認し、すぐに持ち出せる現金、クレジットカード及び航空券の準備をしておくことをお勧めします。なお、緊急時に運行される航空機等は、正規運賃が適用される場合が多々あることから、現金及びクレジットカードの支払可能額が十分かについても確認してください。
(4)医療水準については、日本と同じレベルは望めず、重傷者への十分な対応はできません。これらの医療事情により、重大な症状を呈する疾患の場合には、ヨーロッパ等への搬送も考慮されるため、搬送費用、治療費を十分に考慮にいれた保険に加入してください。
そのほかの衛生・医療事情の詳細につきましては、外務省海外安全ホームページ内のマリの「世界の医療事情」(https://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/medi/africa/mali.html )を参照してください。
4 隣国のアルジェリア、ニジェール、コートジボワール、ブルキナファソ、ギニア、モーリタニア及びセネガルについても、別途それぞれ危険情報が発出していますので、併せて留意してください。
(問い合わせ窓口)
○外務省領事サービスセンター
住所:東京都千代田区霞が関2-2-1
電話:(代表)03-3580-3311(内線)2902、2903
(外務省関連課室連絡先)
○領事局海外邦人安全課(テロ・誘拐関連を除く)
電話:(代表)03-3580-3311(内線)9850
○領事局邦人テロ対策室(テロ・誘拐関連)
電話:(代表)03-3580-3311(内線)30470
○海外安全ホームページ:
https://www.anzen.mofa.go.jp/ (PC版・スマートフォン版)
http://www.anzen.mofa.go.jp/m/mbtop.html (モバイル版)
(現地大使館連絡先)
○在マリ日本国大使館
住所:Avenue du Mali, devant le Ministère de l’Economie et des Finances, Hamdallaye ACI2000, Commune IV, Bamako, Mali
電話:(市外局番なし)4497-9220(代表)
国外からは(国番号223)4497-9220
FAX:(市外局番なし)4490-4947
国外からは(国番号223)4490-4947
緊急携帯電話(夜間、休館日):(市外局番なし)6675-3326
国外からは(国番号223)6675-3326
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