2021.03.26
アメリカ アジア系住民に対するヘイトクライムについて
1.米国では現在、新型コロナウイルス感染拡大の経緯等に起因するとされるアジア・太平洋島嶼系米国人(AAPI)に対するヘイトクライム(憎悪犯罪)やヘイトインシデント(犯罪に至らない憎悪事案。人種差別的中傷や無視等)の発生増加を危惧する声が高まっています。
2.最近では、ワシントンDCほか米国各地において、AAPIに対するヘイトクライムに反対する抗議活動が頻繁に行なわれ、3月19日にはバイデン大統領・ハリス副大統領が演説の中でAAPIに対するヘイトクライムを非難し、そのほか連邦政府高官や一部州知事等も同様の声明を出すなどの動きがみられました。
また、バイデン大統領は、1月26日付け覚書で司法長官他に対し、[1]AAPIへの差別・いじめ・ハラスメント・ヘイトクライムを防止するために州・地方の関係機関・AAPIコミュニティ・地域の団体を支援し、[2]実態把握のためのデータ収集拡大及び市民による通報拡大につき検討すること等を命じており、例えば司法省では、通報に基づく個別捜査に加え、全米のAAPIコミュニティからの聞き取り調査ほか様々な対策を開始・強化しています。
こうした動きは州・地方政府でもみられ、AAPIコミュニティや関連施設でのパトロール強化、AAPIに対するヘイトクライムの特設ウェブサイト設置などの対応が取られています。
3.当館では、現時点で当地(DC、MD州、VA州)における邦人に対する具体的脅威情報には接しておりません。一方で、アジア系住民の外見的特徴に向けられたと思われる傷害等の事件は米国各地で確認されており、当館としては、当地の治安情勢に引き続き注視し、必要に応じ在留邦人の皆様に情報発信を行っていく所存です。
在留邦人の皆様におかれては、ヘイトクライムに限らず、地域の治安情勢について情報収集に努めるとともに、夜間の一人歩きを可能な限り避け、不審な場所・人物を感じたら速やかにその場から離れる等の安全対策を引き続き励行願います。
※情報収集に際しては、州・地方政府、地元警察のホームページやソーシャルメディア(Twitter、Facebook)及びローカルニュース(新聞、テレビ、ラジオ、電子版記事)の情報が参考になります。また、現地当局からの安全情報をいち早く受け取るため、お住いの地域を管轄する地方政府(郡や市など)に緊急情報の配信サービスがあれば登録をお勧めします(地方政府の公式ホームページ等をご確認ください)。
4.ヘイトクライム被害の通報
ヘイトクライム被害を受けた場合、または被害を目撃した場合は、以下のとおり米当局に通報してください。また、安全を確保した後に当館(領事班)にもご一報いただければ幸いです。
(1)緊急の場合は「911」に通報
※全米共通。英語が不得意な場合は「ジャパニーズ・プリーズ」と伝えてください。
(2)被害の届け出(非緊急)は以下の順に行ってください。
[1]最寄りの警察署に連絡
→当館HP(非緊急時の連絡先): https://www.us.emb-japan.go.jp/itpr_ja/houjin-engo.html
※自宅・職場等を管轄する警察署の電話番号は予め控えておくことをお勧めします。
[2]FBIへオンラインで届出、または、FBIフィールドオフィスへ電話
→司法省(ヘイトクライム通報窓口等)
https://www.justice.gov/hatecrimes/get-help-now
※なお、VA州政府は、上記に加え、「Stop AAPI Hate」(AAPIに対するヘイト事例を収集・分析し、地域の安全対策支援、政府への政策提言等を行う人権団体)にも被害報告することを推奨しています。
https://stopaapihate.org/
【DMVの関連ウェブサイト・連絡先】
◎ワシントンDC
<警察>
https://mpdc.dc.gov/page/hate-crimes-faqs
・The Hate Crimes Voicemail TEL 202-727-0500 (希望すれば匿名で通報可)
<DC政府Human Rightsオフィス>
https://ohr.dc.gov/page/reporthatecrime
・The DC Victim Hotline:Call or text 1-884-443-5732
→DCの犯罪被害者支援団体が無料・24時間体制で被害者支援及び情報提供。匿名、チャットも可。
◎メリーランド州
<州政府Civil rightsオフィス>
https://www.marylandattorneygeneral.gov/Pages/Civil/default.aspx
・Hate Crimes Hotline: 1-866-481-8361
◎バージニア州
→被害者支援のための各種ホットラインも案内
5.ご参考として、アジア系住民に対するヘイトクライムの被害状況を示す関連統計の一部を以下に抜粋します。
(注:ヘイトクライムやヘイトインシデントは、通報されないことや、統計上ヘイト事例として分類されないことがあるなど、一般に実態把握は難しいとされていることにも留意する必要があります。)
(1)DC警察(DC内のヘイトクライム統計)
https://mpdc.dc.gov/hatecrimes
<被害者がアジア系であると判明している件数>
2019年 6件(暴行4件、脅迫1件、器物破損1件)
2020年 3件(暴行2件、脅迫1件)
(2)FBI(全米のヘイトクライムの統計。最新版は2019年)
https://ucr.fbi.gov/hate-crime/2019
<人種・民族等に基づく差別に起因するヘイトクライム(2019年)>
・反・黒人/アフリカ系アメリカ人・・・1930件
・反・白人・・・666件
・反・ヒスパニック系/ラティーノ・・・527件
・反・アジア人・・・158件
・反・インディアン/アラスカ先住民・・・119件
・反・ハワイ先住民/太平洋島嶼系・・・21件
(以下省略)
(3)「Stop AAPI Hate」は、同団体が受け付けた被害報告の件数を集計し公表しています(注:犯罪を構成するヘイトクライムに加え、犯罪に至らないヘイトインシデントを含んでいます)。 https://stopaapihate.org/reports/
<被害報告総数>
報告対象期間(2020年3月19日~2021年2月28日)に「Stop AAPI Hate」が受け付けた被害事例は全米で「3,795件」であり、これは実際に発生している被害事例の一部に過ぎない。
<被害の種類>
・言葉によるハラスメント・・・被害全体の68.1%
・忌避(意図的にアジア系住民を避ける等)・・・20.5%
・身体的暴行・・・11.1%
・その他・・・8.6%
・咳・唾かけ・・・7.2%
(以下省略)
<被害者のエスニシティ>
・中国・・・42.2%
・韓国・・・14.8%
・“アジア人”・・・9.0%
・ベトナム・・・8.5%
・フィリピン・・・7.9%
・日本・・・6.9%
(以下省略)
<州別被害報告件数(抜粋)>
・CA州 1,691件(全体の44.56%)
・NY州 517件(13.62%)
・WA州 158件(4.16%)
・MD州 51件(1.34%)
・VA州 49件(1.29%)
・DC 40件(1.05%)
■在アメリカ合衆国日本国大使館
住所:2520 Massachusetts Avenue N.W., Washington D.C., 20008, U.S.A.
電話:202-238-6700(代表)
HP:https://www.us.emb-japan.go.jp/itprtop_ja/index.html