2021.01.15
フランス EU域外から入国する者は出発72時間以内に検査を受けた陰性証明の提示が必要(2021年1月18日~)
1月14日夜、カステックス仏首相ほか関係閣僚が記者会見を行い、今後の新型コロナウィルス感染対策について発表したところ、概要は以下のとおりです。
1 感染状況
・欧州において依然として感染は広まっている。
・仏においては、年末年始には爆発的な感染拡大は見られず、感染件数、陽性率で見れば欧州の中では低く抑えられている。
・先週の会見時からの1週間では、1日平均1万6千件の新規感染が確認されている。感染状況は落ち着いているが、先週に比して入院件数、蘇生病床の件数ともに増加しており、依然として懸念される水準である。
・取り得るべき措置を取っても感染状況が悪化する場合は、もう一度外出制限措置を取らざるを得なくなる。
2 英国・南アフリカの変異種
・英国の変異種は、従来のウイルスよりも30%から70%感染力が強いとされ、潜在的に子供に対する感染力も強いとされる。感染件数は多い一方、重症化は従来のウイルスよりも少ない。
・仏における研究調査では、仏では100件の感染のうち、1件から1.5件が英国の変異種によるものであり、毎日200件から300件の感染が発生していることとなる。
・南アフリカの変異種は、多くの情報は無いが、従来のウイルスよりも感染力が強い一方、重症化は従来のウイルスよりも少ない。
・地理的に近いマヨット及びレユニオンでの警戒が必要であり、警戒通知が発出されている。
・南アフリカの変異種は、モザンビークに滞在した者の罹患が確認されている。その接触者も感染しており、感染者の追跡を行っている。
3 仏入国・渡航時の検疫強化
・仏における変異種の感染は限定的であるが、感染拡大を阻止するためにあらゆる感染防止措置を取る必要がある。
・1月18日(月)より、EU域外から仏に入国する者は、出発72時間以内に検査を受け、航空機又は船舶の搭乗前に陰性証明の提示が求められる。
・EU域外から仏に入国した者は、仏に入国後7日間は自主隔離を行い、その後さらにPCR検査を受検する。
・出発国において検査が受けられない場合は、現地の仏大使館領事部にて渡航証明を入手する。この場合、入国後は政府が定める施設で7日間の隔離措置を取らなければならない。
・EU域内から仏へ入国する場合、1月21日に開催されるEU閣僚理事会において、国境を跨ぐ労働者への措置等、取るべき措置が話し合われる。
・海外県について、特にアンティル諸島、ギアナはアマゾン地域特有の危険があるため、現地事情に合わせた対策を取るとともに、陰性証明の提示など、現在仏本土に渡航する際に求められている措置を、同地域へ渡航する際も求めることとなる。
・コモロでは南アフリカの変異種が確認されており、先週末からコモロ上陸の際に検査を実施、リスクのある場所への移動制限など緊急対策が取られており、レユニオンでも必要な措置である。
・マヨット及びレユニオンから仏本土への渡航には、陰性証明が必要となる。
4 夜間外出制限
・16日(土)より、18時からの夜間外出制限措置を全国的に導入。本措置は、少なくとも15日間継続される。
・18時からの夜間外出制限措置は既に25の県で導入されており、感染拡大防止に効果が出ている。経済活動、学校生活、移動ができるよう、全国的に予防措置として導入する。
・18時からの夜間外出制限においても、例外的に外出が認められる理由は従来と変わらず限定的。仕事からの帰宅や保育園への子供の迎え等は可能であるが、個人的理由による外出はできない。
・商店や商業施設は18時には閉店となる。
・本件措置によって商店等での営業時間が短縮されることで多くの人が密集しないよう、昼休憩時の開店を推奨する。また、県知事による地方関係者との協議を経て例外的に日曜日の営業も認められる。
5 初等・中等教育
・学校は引き続き開いているが、食堂での衛生措置の強化、屋内でのスポーツ活動の停止、1週間に30万人規模での検査を実施する。
・11月から3分の2の高校で実施されているハイブリッド授業(対面授業と遠隔授業の両方)を1月20日以降も継続する。また、最終学年の高校生については可能な限り対面授業を実施する。必要に応じて中学校でもハイブリッド授業を実施する。
・小学校の食堂においては、クラスの異なる児童が一緒になることは認められず、食堂の利用時間をずらすなどして、同じクラスの児童同士で、同じテーブルで毎日食事をとることとする。また(食堂からの)食事の持ち帰りもあり得る。中学校についても同様であるが、高等学校については人数が少ないので時間調整は必要ない。
・スポーツ活動については、学校内外の屋内での活動が停止される。
・今後1か月で学校関係者と児童生徒100万人に対して検査を実施するとともに、3人以上の感染者が確認された学校には検査チームが派遣される。また、必要に応じて学級閉鎖や中学校、高等学校の閉鎖を行う。
6 高等教育
・1月25日の週から、1年目の学生を対象に、小グループ授業については半数での対面授業を認めるとともに、状況が許せば、他学年も同様とする。
・明日(15日)に大学学長会議と学生組合に対して、詳細を説明する。
・精神的にも経済的にも厳しい状況にある学生に対しては既に種々の対策を取っているが、カウンセラーの数を倍増していく。
・まもなく抗原検査が大学の保健部局で受けられるようになる。
7 ワクチン接種
・12月27日より始まったワクチン接種キャンペーンでは、1月の第一週までには10万人がワクチン接種し、本日木曜は7万人が接種、これまでで合計31万8千人が接種済み。
・今すぐにはワクチン接種しないとの声もあるが、ワクチン接種は、感染予防のほか、重症化しないという効果がある。ワクチン接種が進めば、病院が重症者で溢れるリスクも低くなる。
・1月18日より、予定されていた75歳以上の高齢者に加え、年齢を問わず重症化リスクの極めて高い疾患を有する人(がん、慢性の腎臓病の患者など約80万人)への接種を開始。これらの患者がワクチン接種を受けるためには、かかりつけ医の処方箋が必要。これにより、計640万人が対象となる。1月末には当初の接種目標の100万人を越えるだろう。
・また、18日からは700か所以上のワクチン接種センターが開設される。
・ワクチン接種の予約には、次の3つの方法がある。1.最寄りのワクチン接種センターへの問い合わせ、2.専用ダイヤル(15日(金)午前8時に開設、電話番号0800-009-110、6時-22時で定休無し)、3.政府のサイト(http://www.sante.fr/ )。
・2月末までに250万人分のワクチンが確保され、今後、他のワクチンも承認される見込みであり、承認されれば追加的に400万回分のワクチンが確保される。
8 経済対策
・経済支援の柱は連帯基金。2020年12月分の連帯基金の申請手続は1月15日から開始され、来週初めに給付がなされる。
・レストラン等の宅配、テイクアウトによる売上は、連帯基金の支給額算定の根拠となる売上として計上されない。このルールは2020年12月分から適用され、今後も維持される。
・レストランやカフェに関係する卸売業者、納入業者等のうち、売上が70%以上減少している企業は、連帯基金から、月20万ユーロを上限に2019年の売上の20%に相当する額の給付を受けることができる(月1万ユーロの給付との比較でいずれか高い方を受給可能)。企業の規模に関わらず、2020年12月分から支給。
・休業措置の対象となっている企業及びそれらに関連するセクターに属する企業のうち、月の売上が100万ユーロを超える企業に対して、固定費の70%を支援。この支援は連帯基金に上乗せされるもので、2021年1月から6月までの間に300万ユーロを上限として実施。300万ユーロは出発点で、この上限額を引き上げるために欧州委員会と交渉する。
・米国の制裁(ワイン・コニャックに対する追加関税)の影響を受けるブドウ農家に対して、連帯基金による支援を実施。売上減少が50%以上の場合、月20万ユーロを上限に2019年の売上の15%を補償。売上減少が70%以上の場合、月20万ユーロを上限に2019年の売上の20%を補償。
・事業内容、規模に関係なく、すべての企業は、政府保証付融資の返済開始時期を一年遅らせることができる。(2021年4月返済開始となっていた融資が2022年4月から返済開始となる。)
・政府保証付融資以外の融資についても、銀行は寛大な姿勢で、ケースバイケースで支払猶予や債務繰延べを検討する。
・2020年12月に実施された社会保険料の支払免除等の措置を2021年1月も継続。レストラン・カフェ・ホテル・文化・スポーツ等のセクターに属する企業で、休業中又は売上が50%以上減少しているすべての企業が対象。
・2020年にほぼ使用されなかった設備(レストランのオーブン、ナイトクラブの機材、スキー場のリフトなど)について、企業のバランスシート上の負担を緩和し、自己資本を保持する観点から、減価償却の先延ばしを認める。
・これらの支援に要する費用は月に40億ユーロ。
・これらの支援とは別に、最後に、仏経済の未来を構築するために重要な戦略的ポイントを三点指摘したい。
・一点目は、仏国民に今回の危機で積み上がった1000億ユーロの貯蓄を仏経済の中で消費・投資することを可能とすること。そのためには、安心感や経済財政政策の明快さが必要。仏国民に対する増税は行わない。数年前から実施してきている減税を今後も継続する。
・二点目は、経済再興の加速。再興プランの1000億ユーロを可能な限り迅速に支出しなければならない。
・三点目は企業の自己資本。企業の自己資本は、投資、イノヴェーション、富の創造、雇用創出に決定的に重要。1月28日に資本参加型融資の内容について説明する。
・11月は300万人の労働者が部分的失業制度の対象となった。昨年4月は900万人が同制度の対象となっていた。
・新たな衛生規制が導入されることから、引き続き部分的失業制度を実施する。
・完全な休業措置の対象となっている企業(レストラン、体育館、ナイトクラブ等)、部分的な休業措置の対象となる企業(18時以降の夜間外出禁止措置の影響を受ける商店等)については、政府は、企業が従業員へ支払う休業補償を100%助成。これは衛生規制が適用される限り継続される。
・ホテル、イベント関連等の企業については、政府は、2月末まで、従業員への休業補償の100%助成を実施。3月以降は、売上が80%以上減少している企業については100%助成を維持。その他の企業については、15%の企業負担が発生することになる(政府助成85%)。
・その他の企業については、2月末まで、企業負担15%、政府助成85%を継続。感染状況が落ち着けば、3月以降は、企業負担は40%となる(政府助成60%)。
・長期部分的活動制度は、部分的失業制度よりも従業員、企業を保護する効果がある。6000以上の企業が利用しており、42万の従業員がカバーされている。
・雇用の保護は我々の優先事項であり、今後も優先事項であり続ける。
9 文化施設・活動
・文化施設の閉鎖は仏のみならず、欧州諸国で取られている措置である。
・連帯基金の活用、各種社会保障料の免除、保護基金、緊急基金が文化に携わる者の雇用を守るために引き続き活用される。
・文化施設の再開、閉鎖については、保健大臣や専門家とともに検討を進める。感染拡大の状況が厳しい中、文化施設再開の具体的日程を出すことは困難であるが、春の再開は排除されない。
10 テレワーク
・テレワークを推奨する方針は昨年10月末から変わらず、通勤、就業時の接触を減らすことが重要である。
・一方、テレワークが困難な職場があることも事実であり、事情に合わせて衛生プロトコルを整備してきた。
・新たな衛生プロトコルは1月7日から有効であり、その中では、100%テレワークを行う従業員であっても、職場への出勤は週に一日認められている。
11 結語
・感染状況が厳しい中、この危機を脱出するにはワクチン接種が優先課題であり、過去に無いワクチン接種計画となっている。
・同時に、ワクチンの効果が表れるには数か月を要し、その間は忍耐、感染予防措置を取るなど責任ある行動が必要である。
【問い合わせ先】
在フランス日本国大使館領事部
電話:01-4888-6200(海外からは +33-1-4888-6200)
メール:consul@ps.mofa.go.jp